変わらない親子の願い

共に育つ教育を進める千葉県連絡会は、障がいのある子どもを兄弟姉妹や近所のお友だちと一緒に普通学級で学ばせたいと願う親達が集まり、まだインクルーシブ教育という言葉が聞かれなかった1991年に結成しました。

現在までネットワークが続いている根源にあるものは、「みんなと一緒がいい。」という変わらない親子の願いです。「みんな」とは、兄弟姉妹、今まで一緒だった保育園、幼稚園、小学校の友達、地域の同世代の子ども・若者です。広くは、「同じ人間」という尊厳を求める「みんな」です。
障がいなどによる「違い」にかかわらず、同じ子ども、同じ人間として同じ時代に育ち、同じ未来を生きていく「みんな」の1人でありたいという親子の願いは、時を経ても変わりません。

会では、多くの障がいのある子ども達が、「学校が楽しい。」「勉強が好き。」「先生が好き。」「友達が好き。」と言って普通学級に通い、卒業しています。
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インクルーシブ教育とは

インクルーシブ教育とは、障がいの有無、国籍、人種、宗教、性別などの違い、それにともなう課題を包摂し、すべての子どもたちが同じ場所で、分けられずに学べる教育のことを言います。

インクルーシブ教育は、すべての子どもが「共に関わり合い、教育を受ける権利」「共に関わり合い、子供時代を過ごす権利」を保障するとともに、人間の多様性を尊重し、将来社会の中で自分らしく生きていく力、異なる他者と共生する資質を育てる教育です。
障がいのある人、少数派の人を社会から排除せず、幼い頃からあたり前に全員が関わり合い、学び合うことで、子どもたちは自然に多様性を理解し、共生社会を創る方法を身につけることができます。

インクルーシブ教育は、持続可能な開発目標(SDGs)に掲げられる、より公平で包摂的な社会を実現する可能性が高い教育であることから、国際的な潮流であり、世界標準が目指されています。
国連もインクルーシブ教育の推進を勧告しており、多様性社会実現のための重要な理念とされています。

[解説]インクルーシブ教育と特別支援教育との違い

すべての子が安心して学べるのが普通学級

現在、日本の学校では、すべての子どもが一般の教育を受ける権利がまもられるよう、配慮や環境調整をすることが義務化されています。合理的配慮の拒否など、障がいのある子が排除されるような差別的対応は禁止されています。普通級でも支援級でも、配慮する程度に差があってはいけません。

日本が2014年に批准した国際法「障害者権利条約」には、障がいのある子どもが一般的な教育制度(特に初等教育、中等教育)から排除されない権利と、教育において合理的配慮や必要な支援を受ける権利が明記されました。そして、条約締約国は、これらの権利を目的とする教育制度を確保しなければならないと定めています。

日本では、これらの原則を受け、2011年〜2016年にかけて「障害者差別解消法」「障害者基本法の改正」という国内法整備を行いました。これにより、小・中学校は、全ての子どもが普通学級に入学すること、教育委員会に認定を受けた子どもだけが支援学校、支援学級へ行くことが原則になりました。
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普通学級で配慮してもらえること

(1)小・中学校の普通学級で、安心できると感じられた学校(先生)等の対応の例
これまで共に育つ教育を進める千葉県連絡会に寄せられた、障がいのある子の実例をまとめています。
(2)以下は、今まで会に寄せられた、学校での合理的配慮、調整や工夫の一例になります。他にも多様な事例があります。

<人的体制、設備関係>
・看護師の配置
・車椅子の移動、身体の介助の体制
・休み時間におむつ交換をする同性の先生の体制
・エレベーターの設置
・スロープ、手すりの設置
・トイレの洋式化
・ウォシュレット付き便座の設置
・体にあった椅子や机の手配
・机の隣に置く、折りたたみ式荷物台の用意
・体を休めたり、身体介助をする部屋の確保
・保健室内にシャワーの設置
・子どもに合った形状の給食、食具の提供
・意思伝達のための道具(ホワイトボード、ブギーボード、写真・イラスト等)の用意

<先生達に手伝ってもらえること>
・校門と教室間の移動
・教室移動
・クラブ、委員会活動、部活の参加サポート
・朝の準備、帰り支度
・教科書やノートの準備
・連絡帳の書字
・よみがなつき教材の提供、教材の文字の拡大
・意思決定支援(席替え、係やクラブ決め、班分けなど)
・作文サポート(書きたい内容の聞き取り、下書き作成)
・持ち物の管理
・タブレットの操作
・板書の支援
・文章の読み上げ
・わからないことの個別の説明
・着替え
・トイレ介助(おむつ交換、用後の清拭、汚れた際の着替え)
・給食の食事介助
・給食当番のサポート
・宿泊学習での身辺サポート

<授業中の配慮・工夫の具体例>
・子どもが授業中に教室から出て校内を探検したり、特定の場所に行きたい時は、安全のため、手が空いている先生が来て付き添ってくれる。
・子どもが教室に入らず廊下にいる時、先生は声をかけつつ、無理強いしたり叱ったりせず様子を見守ってくれる。
・わからない授業を学ぶことを無理強いせず、子どものペースに合わせて、自由帳、タブレット学習を取り入れながら、少しずつ授業内容に取り組むサポートをしてくれた。子どもは、板書や教科書読み、プリント記入、共同学習の参加など、自分のペースでできることが増えていった。
・教科書のページがわからないが、先生が開いてくれる。やっているところに付箋を貼ってくれる。
・障がいのある我が子を含め、色々な子どもが学びやすいよう、先生は集中するのが困難な一斉授業を長時間しない。個別に問題に取り組む時間を入れたり、タブレットで単元に関する動画を見たり、アクティブな授業をしてくれる。
・プリントやドリルが1人で出来ないが、先生が赤ペンで書いてくれて、なぞり書きをして完成している。
・親の手伝いがなく宿題ができるよう、ドリル、プリント、漢字ノートを、なぞれるよう下書きをして付箋を貼り、子どもに説明して持たせてくれる。プリントは拡大したり、漢字ノートは子どもの力に合わせて大きな字で見本を書いてくれる。
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障がいのある子が普通学級へスムーズに入学する際のポイント

1. 就学相談に参加しない

子どもが学校で支援が必要と思われる場合は、就学先について相談し、専門家に適性を審議してもらうため、地域の教育委員会が開催する就学相談に参加することができます。ところが、そうすると親子の希望が尊重されず、「普通級ではこのような支援は出来ないから支援級へ行ってください。」「お子さんの発達状況では、地域の学校で受け入れは出来ません。支援学校へ行ってください。」というような一方的な振り分けをされるおそれがあります。これは市町村によって違いがあります。就学先決定のあり方について、法改正に沿って正しくアップデートされている市町村の教育委員会では、「あくまでも就学支援委員会の審議結果は『就学先の見立て』であり、就学先の決定は親子の希望が尊重されますから、希望する就学先に行けますよ。」と言ってくれます。しかし残念ながら、多くの教育委員会が「親子の意志は関係なく、就学支援委員会が就学先を振り分けて決定する。」というやり方をしています。地域によって、子どもの就学先決定の権利に格差があってはならないことですが、これが現状です。

「相談」という言葉が示す通り、就学相談は助言を求め、一緒に考えるためにあり、強制的に結論を押し付けるものではありません。参加義務もありません。それなのに、親が就学相談に申し込んだことで、「就学先の決定について、就学支援委員会の意向が強く反映されても構いません。」と、親が承諾したかのような状況になってしまうことが多々ありますので、普通学級へ行きたい場合は、就学相談に参加しない方が良いでしょう。

ただし、親御さんが子どもを支援学級や支援学校へ通わせたい場合は、就学相談に参加して教育委員会に「認定」をしてもらう必要がありますので、その際は参加する必要があります。普通学級へ行くためには「認定」は必要ありません。誰でも行けるのが普通学級です。就学相談に参加せず、待っていれば、入学する年の1月末までに地域の小学校の入学通知が必ず届きます。
→よくある質問:就学相談は中断できる?転籍は出来る?

2.「就学時健康診断」に参加しない

就学時健診とは、小学校入学予定の子どもに対し、市町村が学校保健安全法に基づいて実施するものです。その目的は以下の2つです。
①子どもの心身の健康状況を把握し、疾病が疑われる場合には治療など必要な助言を行う。
②病気や障がい、発達の遅れを発見し、就学先の助言を行う。(必要な場合は就学義務の猶予・免除も行う。)

就学時健診に参加すると、就学相談へ参加することや、支援学級・支援学校へ行くことを強く説得されてしまう場合があります。就学時健診は義務ではなく、あくまでも任意ですので参加しなくても問題はありません。健康診断は、入学後、すぐに全員に実施されるので大丈夫です。健診会場で呼び出され、就学先決定の助言を断ったり、普通学級を希望する理由を不本意に説明することで、嫌な思いをする必要はありません。

就学時健康診断に参加しないことを表明する文書の例
「就学時健康診断及び就学に関する申入書」
この雛形のように、会の連名をした手紙を市町村の就学時健診の担当部署に提出すると、スムーズに意向を伝えることが出来ます。また、健診会場での保護者への配布物の郵送等もお願い出来ます。連名、提出をご希望の場合はお問い合わせフォームよりご連絡ください。

3. 入学通知が来たら、校長先生と面談をする

1月末までには地域の学校(普通級)の入学通知が郵送で届くので、その後、ごあいさつや合理的配慮のお願い、先生の希望などを伝えるために、校長先生に面談をしておくと安心して学校生活をスタートできます。特に、学校の設備を整えたり、先生達に子どものサポートや配慮をお願いする際は、学校は準備する時間が必要ですので、2月中旬〜3月初旬に面談するのがおすすめです。普通学級へ入学する(みんなと同じカリキュラムの中で学ぶ)ので、特別支援教育コーディネーターの先生の同席は必要ありません。校長先生の他には、教頭先生、必要に応じて養護教諭(保健室の先生)など、子どものサポートについて、面談で共有してほしい先生の希望をこちらからお伝えすると良いと思います。

注意:入学通知を待たずに、お願いに行った方がいいこと
看護師の配置や、バリアフリーの工事などは予算の確保も含め時間がかかりますので、1-2年前位から地域の小学校または教育委員会へ話に行くことをお勧めします。特に、エレベーターの設置をお願いする場合は、少なくとも3年前に教育委員会にお話に行った方が良いです。支援員や、介助員などの加配の人員をお願いしたい場合も、予算申請が必要になる場合があるので、前年の11月〜12月に小学校や教育委員会にお願いしに行くことをお勧めします。合理的配慮の要望は、当会との連名で文書で教育委員会や学校へ伝えることもできます。ご相談はお問い合わせフォームよりご連絡ください。

入学後の学校との話し合いについて

子どもの「障がいの克服」ではなく、「人権」の視点でサポートを考えてもらう

入学してから、子どもが安心して学校へ通い、クラスの一員として皆と一緒に学び、活動に参加し、共に生活するためには、先生方が「この子は沢山のことが出来ないから、しっかり指導しなければ」などと考えるのではなく、まずは「何かが出来る・出来ないに関係なく、学級の1人の子ども」として差別偏見なく子どもを見てもらえることが重要になります。すべての子にとって分かりやすい授業、認め合い支え合う学級づくりなどを大切にしてもらった上で、担任の先生に子どもに関わってよく知ってもらい、「どうしたらみんなと一緒に学べるか?」「子どもたち同士が自然に関わり合えるように」という視点でいつも考えてください、とお願いすることをおすすめしています。

その子の得意を活かした学習方法を取り入れたり、先生方の「管理のしやすさ」ではなく「子どもの立場に立って本当に嬉しい」支援は何か、大人が子どもたちの壁になっていないか、など、合理的配慮を考えてもらう際には、子どもの人権を中心として先生方と話し合っていくことも時に必要です。

「特別に手のかかる子の対応はしない」ではなく、「その子その子に必要な対応は学校全体で考えて整える」という学校全体の認識も大切です。その根幹となるのは、校長先生を筆頭とした先生方の「人権意識」です。すべての子どもが学校に安心していられることは、平等権、社会権にあたる基本的人権です。「○○が出来ない子は、本人の希望で普通学級に来たのだから、特別にサポートしなくてもよい」「障害児が支援を受けたければ、支援学級や支援学校へ行けば良い」という差別的な考えは、先生方の中にあってはならないことです。

「先生用の人権意識啓発チェックシート」
当会では、障害児が差別されていた過去の時代に、当事者が学校で経験した良くない事例を残し、「人権侵害・差別にあたる言動の例」としてまとめた学校の先生用の啓発資料を千葉県教育委員会へ提供しています。千葉県教育委員会が開催している教職員への人権研修では、この中の事例を資料に掲載していただいています。

文書も活用する(要望書の提出)

学校にサポートや配慮、調整や工夫をお願いする際は、担任の先生と連絡帳や面談でお話することが基本になると思いますが、担任の先生1人の負担にならないよう、また、学校全体体制で、すべての先生方に知ってもらい、配慮をしてもらえるよう、基本的なことを手紙や文書にまとめて校長先生にも伝えておくとスムーズです。

加えて、担任の先生、校長先生と対話を進めても、配慮は出来ませんと一方的に断られたり、対話自体をしてもらえなかったり、差別的対応をされてしまった時は、教育委員会に要望書を提出して状況を伝え、組織的に対応してもらうことも時に大切になります。特に先生が配慮を拒否したり、差別的な言動をして、子どもが学校で困ったり、つらい思いをしている場合は迅速に改善してもらう必要があるからです。

当会では、そのような場合に親達が要望書や申し入れの文書を作成し、教育委員会に状況を伝え、必要な配慮を求めてきた要望書の事例を蓄積しています。先生方の差別的だった意識が変われば(または差別的でない先生に変わると)子どもへの対応が変わり、苦しんでいた子どもがとても明るくなり、だんだん成長とともに出来ることが増えたり、後ろ向きだったことを前向きに取組むようになることが多くあります。

会との連名で提出する要望書の事例